ヘルメットに求められる要素のひとつに「軽さ」と「耐久性」のバランスがある。軽量であるほどライダーの負担は減るが、安全性を維持するためには一定の強度も必要となる。このバランスをどう実現するかが、ヘルメット開発における重要な課題だ。

ヘルメットの軽量化と安全性

軽量化がもたらすメリット

ヘルメットの重量は、ライダーの快適性や安全性に大きく影響する。特に長時間のライディングでは、首や肩への負担が蓄積しやすい。そのため、ヘルメットの軽量化は疲労軽減につながり、集中力を維持するうえでも重要なポイントとなる。

さらに、事故時の衝撃は慣性モーメントによって増幅される。ヘルメットが重いと、衝突の際に首や頭部への負荷が大きくなるが、軽量なヘルメットならこの影響を軽減できる。

軽量化と耐久性のトレードオフ

ヘルメットを軽量化するためには、シェルや衝撃吸収ライナーの素材選びがカギを握る。ただし、単純に素材を薄くすれば強度が下がるため、適切な構造設計が求められる。

例えば、シェルは衝撃を受け止めて分散する役割を持つため、強度を維持しながら軽量化するには高度な技術が必要だ。また、衝撃吸収ライナーも安全性を確保しつつ軽量化するために、密度や発泡技術の工夫が求められる。

素材の違いと耐久性への影響

ヘルメットの性能を左右するのが、シェルに使用される素材だ。それぞれの特徴を理解することで、耐久性や軽量化のバランスを考えることができる。

シェルに使用される素材と比重

ヘルメットのシェルには、以下のような素材が使われることが多い。

素材比重
ガラス繊維2.6
カーボン繊維1.8
アラミド繊維1.3
有機繊維0.9
高性能有機繊維0.9
樹脂1.0

ガラス繊維は強度に優れるが、比重が大きいため重量が増す傾向にある。一方、カーボン繊維やアラミド繊維は軽量で剛性が高い。しかし、単体では脆くなるため、複数の素材を組み合わせて補強することが重要だ。

SHOEI独自のシェル技術「AIM / AIM+」

SHOEIでは、強度と軽さを両立するために「AIM(Advanced Integrated Matrix)」と「AIM+」という独自のシェル技術を開発。これにより、従来のガラス繊維単体のシェルに比べ、軽量かつ高剛性なシェルが実現している。

  • AIM:ガラス繊維と有機繊維を最適な順番で積層し、強度と柔軟性を両立
  • AIM+:AIMに高性能有機繊維を追加し、さらに軽量で剛性・弾性に優れた構造に進化

これらの技術により、軽量化を進めながらも耐久性を確保し、衝撃に対する理想的な特性を持つシェルが誕生している。

衝撃吸収ライナーの進化

衝撃吸収ライナーの役割

シェルと並んで重要なのが、ヘルメット内部の衝撃吸収ライナーだ。これは、衝撃を受けた際にクラッシュゾーンとして機能し、エネルギーを吸収・分散させる役割を果たす。

多層構造と発泡技術の進化

SHOEIでは、衝撃吸収ライナーの性能向上にも力を入れている。特に以下のような技術が導入されている。

  • デュアルライナー:密度の異なる2層構造を採用し、衝撃を効率よく吸収
  • 多段発泡技術:部位ごとに最適な密度で発泡し、強度と軽量化を両立
  • エアルート設計:ベンチレーションシステムと組み合わせ、快適性と安全性を両立

M.E.D.S.(Motion Energy Distribution System)

近年、オフロード競技では回転衝撃が問題視されている。転倒時にヘルメットが回転することで、脳幹にダメージが及ぶ可能性が指摘されている。そこでSHOEIが開発したのが「M.E.D.S.」だ。

このシステムでは、衝撃吸収ライナーの一部を動かすことで回転衝撃を吸収。さらに、ライダーの頭部がヘルメット内により深く入り込む構造を採用し、基本的な安全性能を維持しつつ回転衝撃の影響を抑えている。

人気の軽量モデルと選び方

軽量でありながら安全性に優れたヘルメットは、特に長距離ツーリングやスポーツ走行を楽しむライダーにとって魅力的な選択肢となる。SHOEIのラインナップから、人気の軽量モデルを紹介する。

軽量モデルの特長

軽量ヘルメットの選び方として、以下のポイントを押さえておくとよい。

  • シェルの素材:AIM+などの先進素材を使用しているか
  • 内部構造:デュアルライナーやM.E.D.S.のような安全技術が導入されているか
  • フィット感:軽量であってもホールド性が良く、快適な装着感があるか

SHOEIの人気軽量モデル

  1. X-Fourteen
    レース仕様の高性能モデル。エアロダイナミクスに優れ、軽量ながらも高速域で安定した装着感を実現。
  2. GT-Air II
    ツーリング向けのプレミアムモデル。内蔵サンバイザーを備えつつ、AIM+シェルで軽量化を図っている。
  3. NEOTEC II
    システムヘルメットながら軽量な設計。ツーリングユーザーに人気のモデル。

まとめ

ヘルメットの軽量化は、ライダーの快適性と安全性に大きく貢献する。しかし、軽くするだけでは耐久性が損なわれるため、素材や構造の工夫が不可欠だ。SHOEIでは、AIM / AIM+シェルや多層構造ライナー、M.E.D.S.といった技術を駆使し、軽量でありながら高い安全性を実現している。

自分に合ったヘルメットを選ぶ際には、単に軽さだけでなく、耐久性や装着感にも注目して選ぶことが大切だ。